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岐阜の酒コラム
酒蔵の軒先にある杉玉(酒林)とは?その意味や役割について詳しく解説
1.杉玉とは
杉玉とは、その名の通り杉の葉を集めて丸くボール状にしたものです。酒林(さかばやし)とも呼ばれます。
杉の葉のみで作られているわけではなく、針金で芯となるものを作ってから、それに杉の葉を下方から差し込んで固定し、上まで差したらきれいな球状になるように刈り揃えることで完成します。
緑色の葉に含まれる水分が抜けることで、どんどんと茶色になっていくことが特徴です。
2.杉玉の役割
上記で軽く触れましたが杉玉は緑色と茶色の場合があります。
実はこの色の変化こそが杉玉の役割の本質なのです。
まず、日本酒を作る酒蔵が軒先に緑色の杉玉を吊るすのは、新酒が完成したことを知らせるために吊るすのです。
新酒の季節に吊るされた杉玉は時間の経過とともに徐々に枯れていき、茶色へと色を変えます。
そしてその変化は、新酒の変化、熟成具合と連動しているのです。
つまり、新酒が完成したことを伝える緑色の杉玉は、今度はお酒の熟成具合を道行く人に伝えているのです。
3.杉玉の以前の役割
杉玉の役割は、新酒の完成を伝えたのち、葉色の変化により日本酒の熟成具合を伝えることと説明しましたが、実は以前の役割は違うものであったと言われています。
諸説ありますが、最も有力な説は奈良県桜井市にある、大神神社(おおみわじんじゃ)を由来とするものです。
大神神社は、古くからお酒の神様を祀っていることで有名な神社で、ヤマト朝廷の神事のお神酒(みき)を作るという重要な役割を担っていました。
そんな大神神社がある三輪山は、神奈備(かんなび)と呼ばれる神様のよりどころとされている場所で、その場所にたくさん生えている杉にも神が宿るといわれています。
そして、その神が宿った杉の葉を束ねて酒屋の軒先に吊るすという風習が生まれたそうです。
江戸中期には、鼓のように杉の葉を束ねたものを「酒林」と呼び、軒先にかけて酒屋の看板にしたといわれています。
江戸時代の間に杉玉は形を変え、現在にも受け継がれている球状のようになったと考えられています。「酒林」という名称もその過程で杉玉と混合し、現在までに伝わったのでしょう。
現在では、杉玉の役割は酒屋が新酒を完成させたこと、その熟成具合を知らせる役割として認知されていますが、昔の時代では神様が宿った杉の葉を吊るすことで、お酒の神様に感謝を伝えるものだったと考えられているのです。
4.まとめ
四季に恵まれた日本において、日本酒は寄り添うように熟成が進み、その季節ごとの味わいを楽しませてくれます。
その変化を知る一つの指標として、これからは街を歩く際には杉玉の色を少しばかり気にしながら歩いてみるのはいかがでしょうか。
新緑の杉玉や茶色に変化した杉玉を見つけたら、ぜひお店の中まで入ってみてください。新しいお酒との出会いがあるかもしれません。